シンディ・ローパーの初来日公演

1986年9月、シンディ・ローパー( Cyndi Lauper )は初来日公演を武道館で行った。

その時、何故だか自分でもわからないが、チケットもないのに武道館へ足を運んだ。

シンディはファーストアルバム『 She's So Unusual 』(シーズ・ソー・アンユージュアル)の大ヒットの後、2枚目のアルバム『 True Colors 』(トゥルー・カラーズ)を発表した時で、
シンディの長い歴史の中でも、最高潮に乗っていて、
彼女の魅力が最大限に引き出されてヒットチャートを賑わしている時であった。

自分の記憶が定かでないけど、
この日本初公演はアルバム『 True Colors 』の発売前で、

このアルバム曲の初披露が日本公演だったらしい。

開場前の日暮の武道館では、入場を待っている人たちで溢れかえっていた。
もちろんチケットは完売で、当日券などない。

わかってはいたけど、チケット窓口にとりあえず足を運ぶと、
自分と同じように「もしかしたら」という気持ちで何人かの人たちが集まっていた。

ダメ元でチケット窓口に「キャンセル席とかありませんか?」と聞いてみたりしたが、
やはりチケットはない。

そのうち入場が開始され、待っていた人たちが武道館へ続々と入ってゆく。

まあ自分は武道館の外でわずかに漏れてくるだろう演奏を聞ければいいかな、
なんて思っていたら、
突如、「アーティストの意向で特別席が開放されたので販売開始します!」と。
チケット窓口になんとなくいた数人の人たちと一緒に「えーっ!」て。

当然、チケットを購入して、武道館に入ることに。

武道館は円形の舞台で360度席が設けられているけど、
コンサートの場合には、ステージ機材設置の関係で、
ステージ裏側の横というのは死角となるので、
この部分には観客を入れないのが通常。
ステージ真裏側だけは席を設ける場合もあるけど。
(この時も真裏席あったけど満席)

この時の特別席というのは、
真裏側横の死角部分にも客席を追加で設けたのである。
当然、席からステージはほんの僅かしか見えない。

けれど、この時のステージセットでは、真裏席の客のために、
シンディが裏側に回って行ける階段と通路が設けられていて、
真裏の人は常に背面を見ながらの鑑賞だけど、
シンディはその裏側の通路にも頻繁にやってきて、パフォーマンスを行う。

もう、シンディ動き回りまくりだからね。

だから、その真裏の通路にシンディがやってきた時には、
アリーナ席の一番前の人よりも近く、目の前でシンディを見ることができ、
手を伸ばせば届く距離なので、タッチする人も出てきたりとか、
花束を渡していた人もいたり、裏側ならではの特典があるのである。

このツアーのオープニングは、ステージ正面に白い幕を掲げて、
その裏側にいるシンディの影がスポットライトで白い幕に映るという演出。

裏側の席からは、その始まる前の準備というか、
シンディが控え室から出てきて、
スポットライトのポーズを決めて演奏を始めるまでの、一部始終が見れるのである。

これも裏側の特典。
ひょっとしてアリーナ席よりも価値があったかも。

で、自分の特別席というのは、その裏側の斜め横あたりなのだが、
特別席は空いていたので、一番前の席に移動しちゃったりして。

(この時何で一番前の席じゃなかったのかというと、チケット売り場の人が、一番前の方がステージ見えないから、少しでも見える席ということで割り当ててくれたのだけど)

ということで、シンディが裏側の通路を回って通る途中で、
もう手を伸ばせば届く距離で歌ってくれていた。

自分も手を伸ばしたが、あと数センチで届かなかった・・・残念😢

この人のサービス精神というのは本当に凄い。
360度の客に対して、なるべく公平に移動しまくって、
パフォーマンスを行う。

このツアーでのギタリストはリック・デリンジャーで、
この人、ジョニー・ウインターとよく組んでアルバム制作をしていたりした、
名ギタリストである。

どこからシンディ・ローパーと繋がりができたのかわからないが、
『 True Colors 』アルバムとツアーメンバーの1人で、大きな役割を果たしている。

リックもギター弾きながらシンディと一緒に裏側のステージ通路にやってきたりして、
彼のギタープレイは、この時のシンディにとても合ったロックサウンドを作り上げている。

で、YouTube見ていたら、この時の武道館公演のライブを見つけた。

youtu.be

今、改めてこの時のステージを見てみると、
一生懸命覚えたであろう日本語を乱発しているし、
裏側の通路ステージにも何度も来ているし、
1/4位は裏側で歌っていたのじゃないだろうか。

それに、シンディ自身が一番パワー全開でバフォーマンスをしている時で、
本当に素晴らしく魅力的で輝いている。

いやいや、武道館、チケットなくても行ってみるものだね。

シンディだからだったかもしれないけど、とてもラッキーだった。


そういえば、シンディと言えば、過去に、
アルゼンチンの空港トラブルでフライトが中止になり、
乗客たちが怒りをあらわにする中、
居合わせたシンディが懐かしの名曲を歌い始め、乗客の怒りを静める・・・
なんてことが話題になった。

gigazine.net

シンディと日本との繋がりは深く、
まだ売れない頃の下積み時代にニューヨークの日本料理レストランで働いていた。

その店のオーナーが定職もなく過ごしていたシンディに、
「そのままじゃダメだから私の店で働きなさい」と勧誘し、
「いつか売れる日が来るからそれまで頑張りなさい」と支援し続けてくれたことにとても感謝しているという。

その時の出会いがシンディを親日家にさせたきっかけでもあり、
このお店で片言の日本語を覚えたのだと。

2011年3月11日に起きた東日本大震災の時、
丁度日本公演に向かう飛行機の中で、日本に到着してその状況にショックを受けたとのこと。

この時、多くのミュージシャンはコンサートを自粛し帰国する中、
あえて、シンディは日本を勇気づけるんだとコンサートを決行。

youtu.be

その時のインタビュー記事もあった。
(インタービューは震災の1年後)

www.sonymusic.co.jp

初武道館公演の時は、初披露の曲『 True Colors 』を2回歌っている。

1回目はバンドサウンドで、2回目はアカペラで。
観客は初めて聞く曲なのに、みんな一緒に歌っている。
シンディも後のインタビューで、日本が好きになった理由のひとつに挙げていた。

『 True Colors 』名曲である。

 

日本初公演のツアーパンフレットとチケット

日本初公演のツアーパンフレットとチケット