何というタイトルだろう。
直訳すると「異教徒」「無宗教者」。
1983年発表のボブ・ディランのアルバム『 INFIDELS 』(インフィデル)について。
まずこのアルバムの話をする前に、その前のディランの話から。
このアルバム前のディランは、突然ユダヤ教からキリスト教に改宗して洗礼まで受けて、キリスト教三部作と言われる作品を出していた。
(キリスト教といっても、そこはディラン。キリスト教というベールを被っているがやはり内容はディランならでは)
- 1979年『 Slow Train Coming 』(スロー・トレイン・カミング)
- 1980年『 Saved 』(セイヴド)
- 1981年『 Shot of Love 』(ショット・オブ・ラブ)
一般的にこの時期はディランの黒歴史として、あまり触れられることの少ない(というかみんな見ないふり?)時期でもあるのだが、実はこの時期のライブや曲には自分的にはとても魅力的なものが数多くあると思っている。
それに『 Slow Train Coming 』(スロー・トレイン・カミング)のシングル曲ングル『 Gotta Serve Somebody 』(ガッタ・サーヴ・サムバディ)ではグラミー賞ベスト・ロック・ボーカル(男性)部門を受賞している。
アルバムセールスもそれほど悪くないんだけど。
個人的に、三部作の中で特に『 Shot of Love 』(ショット・オブ・ラブ)は、大好きで聞きまくったもの。
なので、以前出たブートレック・シリーズ第13集『トラブル・ノー・モア』は発売時に予約までして手に入れた。
このブートレック・シリーズは、そのディランの黒歴史と言われた三部作の時期での未発表音源にスポットを当てたデラックス版9枚組(8CD/1DVD)のボックス・セット。
ということで、ここまでは前置きなのだが、
次のアルバムではそんなディランが、突然キリスト教からユダヤ教に戻って・・・
「俺は神は信じない」と、言ったとか?
タイトルは『 INFIDELS 』(インフィデル)「異教徒」というアルバムが出た。
一体、何がディランをそうさせたのか? まあ、元々神がどうとかキリスト教にどっぷりなんて絶対無理な人でしょう。
とにかく宗教のベールを外して、自由となったディラン。
プロデュースには、ダイアー・ストレイツのマーク・ノップラーが起用され、彼は『 Slow Train Coming 』(スロー・トレイン・カミング)の録音から参加しているのだが、このアルバムでマーク・ノップラーらしいサウンドが全面に出ていて、今までのディランサウンドとは一味違った新鮮さがあった。
(最も、アルバム制作中に、ダイアー・ストレイツの仕事が入ってマークは途中で抜けちゃって、残りはディラン自身がプロデュースしたとか)
前回ストーンズの話で少し出たミック・テイラーもギターで参加している。
そして、このアルバムで印象的な曲
『 License to Kill 』(ライセンス・トゥ・キル)が名曲である。
今の時代でもこのメッセージは強く訴えるものがある。
内容としては、
人間はいつも傲慢で、
地球を自分達で支配できるものと勘違いして、
破滅へと向かってゆく。
そのことに心を痛めている女性が、
〈誰があの人たちの殺しのライセンスを奪ってくれるの?〉
と呟いている
(要訳 by きいうし)
というもの。
いつもディランの歌は心の片隅に残り続ける。
本当は気づいていたはずだけど、忘れそうな思いを呼び戻してくれる。
特に今の時代、この曲が心に刺さる。
とにかくディランの魅力はまだまだ数限りなくあって、
いつか気が向いたら、他の曲の話もしてみよう。